脳の疾患などによる緊急な治療が必要な吐き気・嘔吐は、病院での治療が優先されるため、
ここでは、日常的に見られる吐き気・嘔吐について解説していきます。
吐き気・嘔吐は、消化に関与する臓腑(「胃」「脾」「肝」)がスムーズに働かなくなったために、
「胃」の「気」が下に降りられず、上に逆行してしまうことで起こります。
消化に対する「胃」「脾」「肝」の役割
消化吸収は 「胃」「脾」 が協力しあって行い、「肝」 がその調節に関与しています。
- 「胃」の働き
・ 食べ物を受け取る
・ もみ砕いて細かくする
・ 下(小腸)へ送る・・・「胃気」の方向性は下
これらの働きが低下すると、吐き気・嘔吐の症状につながります。
- 「脾」の働き
・ 食べ物・水分の消化吸収を行う
・ 必要なものを上に持ち上げる・・・「脾気」の方向性は上
これらの働きが低下すると、食べ物や余分な水分が停滞して、吐き気・嘔吐の原因となります。
- 「肝」の働き
・ 「気」の流れを調節する
・ 消化を助ける(胆汁の分泌と排泄)
・ 感情のコントロール
「気」がスムーズに流れていれば、「胃」「脾」も元気に働けます。
しかし、「気」の流れが滞ってしまい「胃」「脾」に影響すると、吐き気・嘔吐の症状につながります。
吐き気・嘔吐を引き起こす要因
消化吸収は 「胃」「脾」 が協力しあって行い、「肝」 がその調節に関与しています。
外邪(身体に悪影響を与える因子)を受けたことによるタイプ
<要因>
・ 季節や気候の影響を受ける
・ 風邪を引く など
外邪としては「風」「寒」「暑」「湿」などがあります。
これらが胃を攻撃すると「胃気」が下に降りられず、吐き気・嘔吐の症状が出ます。
例えば、夏風邪を引き、吐き下しの症状がある場合、暑湿の邪の影響が考えられます。
また秋冬にゾクゾクする風邪を引き、吐いてしまう場合、風寒の邪の影響が考えられます。
<症状>
・ 突然嘔吐します。
・ 頭や身体が痛くなる、発熱・悪寒がある などを伴います。
<漢方>
邪を取り除くものを使います。
飲食が停滞してしまっているタイプ
<要因>
・ 食べすぎ、飲みすぎ
・ 油っこい物の摂りすぎ
・ 生もの、冷たいものの摂りすぎ
・ 不衛生なものを食べる など
これらが原因となって「胃」「脾」を傷めてしまい、食べたものが停滞すると「胃気」が降りられなくなり、逆行すると吐き気・嘔吐の症状が出ます。
<症状>
・ 酸っぱいものを嘔吐します。
・ お腹が張る、げっぷがでる、食べたくない、吐くと楽になる などの症状を伴います。
<漢方>
消化を助けるものなどを使います。
余分な水分の毒素が溜まってしまっているタイプ
<要因>
・ 食べすぎ、飲みすぎ
・ 胃腸が弱い
・ 夜中に食べる
・ よく思い悩む・・・こんな人は「脾」が弱くなりがちです。 など
「胃」「脾」が元気に働けないと水分をきちんと代謝できず、余分な水分の毒素として溜まってしまい、吐き気・嘔吐の原因となります。
舌苔がベタッと厚くついている人は、このタイプかもしれません。
<症状>
・ このタイプの多くは、水のようなものを嘔吐します。
・ めまい、動悸 などを伴うことがあります。
<漢方>
分代謝を改善するものを使います。
「気」の流れが滞ってしまっているタイプ
<要因>
・ イライラする
・ よく怒る
・ ストレスが大きい
・ 緊張しやすい、あるいは緊張が続いている
・ よく人に気を遣う など
「肝」はストレスを受け止める働きをしています。
しかし、その人にとって過剰な刺激が加わると、処理しきれずに「気」の流れが滞ってしまいます。
それが「胃」「脾」に影響すると吐き気・嘔吐の症状につながります。
ストレスから吐いてしまう、「神経性胃炎」 や 「逆流性食道炎」 と診断された方などは、
このタイプも考えられます。
<症状>
・ 酸っぱいものを嘔吐します。
・ 胸や脇が張る、げっぷが出る、ため息が多い などを伴います。
<漢方>
「気」の流れを手助けしてあげるようなものを使います。
胃腸が冷えているタイプ
<要因>
・ 普段から身体を冷やすものをよく摂っている
・ 冷えやすい体質
・ 胃腸が弱い など
手足が冷えると動きづらくなるように、胃腸も冷えると元気に働けなくなります。
そして、「脾」「胃」が充分に働けないと、食べ物を受け入れて消化することができず、吐き気・嘔吐の症状が出てしまいます。
クーラーにあたったり、冷たいものを飲むと吐き気が出る人は、このタイプかもしれません。
飲食のちょっとした不注意や少しの疲労でも、それがきっかけですぐに吐いてしまうので、普段からの養生を心がけましょう。
<症状>
・ 手足が冷たい、便がゆるい、下痢しやすい などを伴います。
<漢方>
胃腸を温めたり、元気にしてあげるものなどを使います。
「胃」の陰液(潤して冷ます働きのあるもの)が足りないタイプ
<要因>
・ 辛いもの、味の濃いもの、脂っこいものをよく食べる
・ 慢性病で陰液が不足している
・ 慢性の炎症が続いている(慢性胃炎など) など
<症状>
・ 何も出なくても吐き気がします。
・ また、良くなったり嘔吐したりを繰り返します。
・ 口や喉が渇く、胸やけがする、空腹感はあっても食欲はない、お小水が濃い、舌が赤い
などを伴います。
<漢方>
「胃」に潤いを与えたり、熱を冷ましてあげるものなどを使います。
吐き気・嘔吐は、上記した以外にもさまざまな原因や体質が重なり合って出てきます。
また、食べすぎなどの一時的なものでも、繰り返すことで慢性化したり、体質的に「脾胃」が弱くなってしまうこともあります。
今症状のある方は早めにケアし、お酒を飲むことが続いている、夜遅くに食べて寝る などの生活習慣が続いている方は、生活の見直しをしましょう。
また、ストレスから症状が出る方も多く見受けられますが、病院へ行くほどではないが生活の中では処理しきれない・・・という方は、早めに漢方で対処しておくことをお勧めします。
ところで、
「肝」と「気」の流れ、ストレスとの関係は漢方独特のとらえ方でもあるため、分かりにくいかもしれませんが、次のようにイメージするといいかもしれません。
「肝」と「気」の流れ、ストレスについて
バネを想像すると分かりやすくなるのではないかと思います。
(1)丈夫なバネで、能力以下の力が加わった場合は、
何の問題もなくそれを受け止められて、バネの動きもスムーズです。
しかし、
(2)バネ自体が痛んでいたり、能力以上の力が加わった場合には、
さらに痛みが増してもろくなり、動きも鈍くなります。
「肝」をこのバネに例えると、元気で心身共にのびのびしている時は、
(1)のように力(ストレスなどの刺激)を受けても問題なく押し返せます。
しかし、心身が疲れている時には、
(2)のようにきちんと受け止められず、動き(流れ)が滞ってしまうのです。
また、このバネの強度や柔軟性は人それぞれ異なり、もともと丈夫な人もあれば、弱い人もいるのです。
したがって、自分のバネの能力(「肝」のストレスなどに対する許容範囲)を知って、対応していくことも大切です。
しかし、どうしても避けられないといったこともあります。
そんな時は漢方では、
例えばバネに油をたらして動き(「気」の流れ)をよくしたり、支えて強度を強くする(弱いところを強くする)などして、対応していきます。
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